president’s message2023年度 理事長所信

一般社団法人豊田青年会議所
第64代理事⾧ 稲垣 博貴

〜誰かのために〜行動を起こすこと。青年会議所を行う上で何よりも大切なこと。
人はどのようなときに行動を起こせるのか。一生懸命頑張れるのか。もちろん答えは一つではない。人はそれぞれに動機を持って生きておりその動機は十人十色である。また、それはJC 活動の動機においても同様に人それぞれであると言える。しかし、多くの人にとって共通していることは 誰かのためになら頑張れる ということではないだろうか。送り出して“”くれる家族や会社のため、同じ志を持ちともに励む仲間のため、そして、私たちが住むこのまちのため。行動を起こす動機となるそれらの顔や姿を思い描いたとき、本当の意味で人は行動を起こせるのではないだろうか。

はじめに
2019 年に端を発した未曽有の疫病の蔓延によって、世界を取り巻く環境は著しく変化し、当たり前だった私たちの日常生活が奪われてから 3 年が経とうとしています。そして、現代の科学技術をもってしても、いまだ出口が見えているのかどうかも分からない状況が続いています。しかし、やまない雨などないように、このつらい状況にもいつか終わりが訪れ、その後にこそ光明がさすもの。このような状況の裏側で次々と生まれるニューノーマル、DXといった新たな価値観や、社会構造の変化に順応し、いくつもの進むべき道の選択肢がある中で、失敗を恐れずに我々の理念である「明るい豊かな社会の実現」に向けて行動を起こしていかなければならないのです。
持続可能なまちのために
私たちの住む豊田市は、その名前が表す通り「クルマ」のまちとして国内はもちろん、世界中から知られているまちであると言っても過言ではありません。市街地には役所や商業・文化施設をはじめとする都市機能を持つ一方、中山間地域には豊かな自然があり、また、県内の 2 割近くを占める広大な土地の随所には数多くの歴史文化財が存在しています。これらはすべてこのまちの貴重な地域資源であり、このまちの魅力であると言えます。42 万という人口を有しながら、様々な出身の人々が集住していることもある中で、一体どれだけの人が、これらの多様性に富んだ魅力を語ることができるでしょうか。私たちがこのまちの新たな魅力の担い手として、いまだ埋もれたままの地域資源を発掘し、新たなまちの魅力や歴史・文化を広く市民に発信することで、このまちの魅力をアップグレードさせ地域に浸透させていきます。

また、これら数多くの魅力が存在する一方で、まちには課題が山積していることも事実です。私たちは長きにわたりその時代に存在する課題と向き合い活動してまいりました。しかし、現代の社会課題はニーズの多様化・複雑化により専門領域のみで取り組むことは難しくなっています。私たちは未来のまちを担う団体として、いつの時代も行政や関係諸団体から困りごとがあれば“ JC に”と頼られる存在でなければなりません。豊田市には私たち以外にもこのまちのために活動する人や団体が数多く存在します。それぞれの目的は違ったとしても、私たちと同じようにこのまちの未来を思う人々とのパートナーシップを高めることで、今まで私たちが取り組んでこなかった新たな課題と向き合うことができると考えます。多様な人が集い、社会の課題解決に向け行動を起こすことで、新たな視点が生まれ、互いに相乗効果をもたらし、持続可能なまちの創造へとつなげてまいります。
ひとの幸せのために
現代社会は物質的にも、利便性の観点からも非常に豊かであると言えます。しかし、デジタル化や DX が進み効率化や合理化が推し進められる現代において、必ずしも利便性や豊かさが幸福につながるわけではありません。近年、政府や企業の間においても、身体的・精神的・社会的に良好な状態であること、すなわち、ウェルビーイングであることの重要性が提唱されています。そのためには、「仕事」「人間関係」「経済」「身体」「コミュニティ」これらの関係性が良好であり続けることが必要であり、また、これはSDGs を達成するための価値の基準でもあると言えます。そして、ウェルビーイングの取り組みは、様々な場面において、これまでのやり方では行き詰まっていた課題を解決し、新たな価値を生み出す可能性を持っています。すべてのひとにとって幸福な社会を目指しウェルビーイングを追求してまいります。

AIの台頭、高度情報社会の到来、グローバル化の加速などにより、子どもたちを取り巻く環境は今後大きく変化していくことが予測されます。変化していく社会環境の中で、子どもたちに必要なものは、問題発見力と問題解決能力と言われています。それはつまり、自分の意思で判断し行動する力と、自由な発想で新たな価値を作る力であると言えます。現代の日本の子どもたちは諸外国の子どもたちに比べ自分自身への満足度が低い水準にあるとされています。自分を肯定的に捉えること、すなわち自己肯定感を高めることは、子どもたちが将来様々な困難を乗り越えていくための土台となるだけでなく、他人と協調していくためにも必要です。子どもたちが自発的に考えたことを探求し、他者と協働していく。これらを実践していくことで、予測不可能なこれからの未来を乗り越えていく力を身につけていただきます。
強い組織となるために
(一社)豊田青年会議所は 2022 年度 48 年ぶりに会員数が 100 人を下回るという事態と直面しました。しかし、再び活気あふれる組織へ、という我々の強い思いが実を結び、2023年度の活動を再び 100 人という大台でスタートすることができます。その一方で、メンバーの半数が入会 2 年未満という現状にも目を向けなければなりません。まちやひとに対し運動を展開していく組織として、その発信力を最大化するために、メンバーがもたらしてくれる新しい風を吹き込みつつ、個々の資質を上げ、対内外の関係性を強化し、メンバーとしての在り方を再認識することで組織を強化していく必要があります。

青年会議所活動において、会員拡大は永遠の課題であり、永遠の継続事業であると言えます。なぜ、私たちは会員を拡大しなくてはならないのか。それは、明るい豊かな社会を実現するための担い手を増やす必要があり、会員数=運動の発信力となるからです。新たなメンバーとの出会いによる自己成長や、プライベートや社業へのメリット、そして何より、仲間が増える喜びなど、メンバーが直接実感することができる自身の会員益を共感することでメンバー全員が積極的に会員拡大を行える土壌を作ってまいります。また、60 年の歴史を紡いでこられた700 人を数える先輩諸氏とのつながりは、会員拡大においても私たちの何よりの強みであります。同じ志を持つ仲間を増やしともに成長することで私たちの運動発信力をさらに高めてまいります。

私たちの活動がどんなに良いものであったとしても、人々の目や心に触れ共感を得ることができなければ意味が無いものと同じです。私たちが行う運動を広く発信するためには、市民や行政だけでなく、関係諸団体や私たちに賛同し協力してくれる方々とのつながりを維持し、さらに強化していかなければなりません。そして、(一社)豊田青年会議所としての発信はもちろんのこと、そのつながりを活かし、ともに広報活動を行うことで、私たちが発信する運動の効果を最大化することができると考えます。また、私たちの存在が広く市民に知られることは、メンバーのモチベーションの向上だけでなく会員拡大にもつながります。そして、近年の社会的制限により、メンバー同士の直接的な関わりが限定的となってしまった今、そのつながりを再構築することで組織力の向上を図ってまいります。

(一社)豊田青年会議所には、先輩諸氏が築き上げてこられた 60 年余の歴史があります。いかに時代が移り変わろうとも、市民から信頼され、このまちにとって必要不可欠な存在であり続けなければなりません。青年経済人として JAYCEE として、一人ひとりが常に市民から見られている存在であることを意識し、胸元に光るバッジに恥じぬよう改めて襟を正し行動する必要があります。私たちが(一社)豊田青年会議所のメンバーであることに誇りを持ち、あるべき姿を再認識することで、長きにわたり受け継がれてきた豊田ブランドを維持向上させてまいります。また、豊田のみならず県内、全国、そして世界へと広がる人とのつながりや学びの機会を支援し、メンバーだからこそ得られる自己成長へとつなげてまいります。そして、そこで培われたメンバー一人ひとりの自己成長が、組織の未来を支えていくのです。

私たちの活動は、長い時間をかけて確立された組織運営によって支えられています。今日までに築き上げてこられた歴史は私たちの大切な財産です。しかし、近年の急速なデジタル化に加えコロナ禍という環境は、良くも悪くもその在り方に大きな変化をもたらすと同時に、私たちに新しい選択肢を与えてくれました。持続可能な組織としてさらに発展していくためには、これまでの運営方法や、その一つひとつが持つ意味を十分に理解した上で、今、そして、未来のこの組織に何が本当に大切なのかを見極め、取捨選択をし、失敗を恐れずにアップデートし続ける必要があります。また、私たちは地域を代表する青年経済人から成る組織です。私たちが行う諸会議や事業の運営方法は、いつの時代も先端を走り続けなればなりません。常にアンテナを高く張り、新たな手法や技術を模索し、果敢に挑戦し続けることで地域社会の先頭に立って活動をしてまいります。
むすびに
青年会議所に入会する動機や目的は、今も昔もその多くが自分自身の成長や人脈作りであると思います。当初は私もそれらを求め入会し、自分のために参加をしてきました。しかし、活動を通し多くの人と出会い、様々な経験をする中でいつしかそのベクトルが、支えたいと思う仲間、所属する組織、自分が住むまち、と、自分ではない「誰かのため」へと変わっていきました。この意識変革は、私が青年会議所活動で得た何よりの成長であったと感じています。「誰かのため」に活動する姿を見て、その人を支えるために、また誰かが行動を起こす。その思いと行動が連鎖し、メンバーからパートナーへそして、まちへと波及し、やがて大きな運動となる。この広がりこそが青年会議所の神髄であると私は考えます
『誰かのために生きてこそ、人生には価値がある 』
“ Life isn’t worth living, unless it is lived for someone else. ”
アルベルト・アインシュタイン
誰のために、何のために活動しているのか。最初は自分のためでもいい。いま一度、自分自身が“JC をやる理由 を見つめ直し、その先にある誰かの姿を思い、明るい豊かな社会”の実現に向け、ともに歩んでいきましょう。
     

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